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縁とタイミングで就農を実現

小野寺さん一家

根っからの動物好きの夫婦の夢

「早く独立したいと思っていました。経営者になりたかった」。

こう語る小野寺雅(まさる)さんは帯広畜産大学の出身で、大学時代は牛を飼い乳を搾る「うしぶ。」や羊を研究する「シープクラブ」に所属していました。妻の舞さんも同大の出身で「うしぶ。」の同期。2人とも根っからの動物好きです。

「牛がモグモグと口の中で草を反はん芻すうさせている姿がたまらなくて」と話すのは舞さん。2人は出会ってすぐ意気投合したと言います。在学中に子どもができたこともあり、20歳で結婚。卒業後、雅さんは帯広市内の牧場に就職することとなりました。

牧場の親方に学んだこと

「将来私が独立したいことを理解したうえで雇ってくれた牧場でした。ありがたかったのは、牧場の親方の指導方法。人としての基礎や礼儀を学ぶことができました」。

社会人1年目の指導者の役割は大きい。農家のほとんどは家族経営なので、世帯主がワンマン社長になってしまうことがある中、大切なことを教えてもらったそう。雅さんは今でも親方の言葉を思い出します。

「農家の多い地区は長くいる人が偉い。骨を埋める覚悟で住み続ければきっと協力してもらえるだろう」

「就農した後に実感しましたね。本当だ、と」と雅さん。アクセルばかりを踏んできた雅さんにとって、就職した牧場の親方はブレーキのような存在でした。3年間の会社員経験は、のちに雅さんを支えてくれることとなります。

人との出会いに助けられて独立を果たす

独立のチャンスは思ったよりも早く訪れます。25歳のとき、大学のシープクラブの同期が士幌町の牧場を紹介してくれたのです。三上さんという夫妻が経営している牧場で、奥さんの体調が思わしくないために離農をしたいという話でした。

「やる気のある若い夫婦」を探していたところ、小野寺さん夫婦に白羽の矢が立ったのだとか。離農者から新規就農者への引継ぎは、1年以上の研修を行うのが通例。「三上さんは研修の間、仕事をかなり任せてくれました。干渉せずに『失敗してもいいから』と言ってくれて」と雅さん。舞さんも「三上さんは心の広い方。なんでも自分でやりたい主人の性格をわかって一年間指導をしてくれたんです」と言います。

人との出会いに助けられてここまできたと話す小野寺さん夫婦。きっと2人の強い志が恩師たちに巡り合わせてくれたのに違いありません。

子どもが多いほど得をする士幌町のシステム

小野寺家には子どもが5人います。舞さんは「まさかこんなに増えるとは思ってませんでした(笑)」。士幌町は出産祝い金(第1子と2子は3万円、第3子15万円、第4子25万円、第5子以降50万円)や入学祝い金(第3子15万円、第4子25万円、第5子以降50万円)の制度があり、子どもが多いほど得をするシステム。

ただ、小野寺牧場は士幌市街から車で10分ほどかかる場所にあります。友人宅へ遊びに行くのも車での送り迎えが必要です。「生き物を相手とする仕事ですし、簡単には家族で旅行にも行けない。ごめんね、という気持ちはあります」と舞さん。

だが、傍らにいた三女茜音ちゃんは、牧場の外の草原で楽しく遊んでいました。敷地は広く、毎日が大冒険。そんな生活を満喫しているように見えました。

就農希望の人を支えていきたい!

牛は現在100頭ほど。「肉牛もやってみたいですね。頑張った結果が目に見えるのでやりがいがあると思う」と話すのは雅さん。静かな口調だが、心の内にはメラメラと燃える闘志が感じられます。また、将来的には今の牧場を新規就農者の研修牧場にしたいという夢もあります。「自分たちのような人たちを送り出したい。これを読んで門を叩いてくれる人がいるといいですね」。

リタイアする経営者が増え始めている一方、北海道の酪農家になりたい人は多い。課題は離農者と新規就農者を上手くマッチさせることができるかどうか。小野寺さんの経験者ならではの視点が活かされる日はすぐそこまで来ています。