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家族と仕事、全部が大切

森本孔美さん

農家の嫁として農業に携わる日々

十勝の音更町出身の森本孔美(くみ)さんは、いわゆる「農家の嫁」。29歳のとき、士幌町の農家に嫁いできました。農業の経験はゼロでしたが、「(農業を)やるつもりで来ました」と、気負いない言葉。義理の母や夫に教えられながら「初めての外仕事」に携わってきたといいます。

トラクターがとても大きくて、乗り込んで作業するのが少しおっかなかったり、ジャガイモの収穫がピークを迎える時期は忙しく、ベルトコンベアに乗せられたイモが目の前を流れていく夢を見たり、大変なこともあるけれど、全部ひっくるめて「自然と一緒に働いている感覚がとっても新鮮」と朗らかに笑う森本さん。「畑から見る夕焼けが本当にきれいで。義母にそう言ったら、『そうかい?』って(笑)。きっと見慣れているんですよね」。

JA女性部や若妻会の一員として活動に参加することで、友人もすぐにできたといいます。「月に1回以上顔を合わせます。コミュニケーションが密に取れるのが、士幌のいいところ。それぞれの農家の母ちゃんから、いろんなことを教えてもらいました」。

育児の傍ら資格取得し、仕事と育児を両立

結婚2年目で長女を授かり、森本さんの生活の中心は育児にシフトしていきます。さらに数年後には、長男を授かります。長男が1歳を迎える頃、森本さんに大きな転機が訪れる。フェイスエステサロンwamiles(ワミレス)のスタッフ資格を取得したのです。

元々、帯広市内のwamilesサロンに客として通っていたという森本さん。スタッフをしている友人に頼まれて、イベントを手伝ったことをきっかけに資格取得を目指そうと思い立ったそうです。「長年通って、エステの良さは実感していました。誰かのためになるのならと、手伝いを引き受けたんです。そのときに資格取得を勧められて。『子どもの世話は見てあげるから』って言ってもらえたことで、やってみようって思えました」。

もうひとつ、家族の身に起こった出来事。長男に聴覚障がいがあることがわかったのです。士幌町にも「ことばの教室」や学童はあるが、「(同じ状況にある子たちと学ぶ)小さい頃の体験は必要かなと、帯広ろう学校の幼稚部に通うことにしたんです。親の立場から、勉強にもなるだろうと思って」。学校まで送り迎えをし、その合間に市内のサロンで働く。長男が町内の小学校に入学するまでの3年を、そうして過ごした森本さん。

森本家の子どもたちは現在、長女が中学2年生、長男が小学6年生、そして次男が4歳。長女が学校で手話の演劇を企画した際には、ろう学校時代のネットワークが活かされたそうです。長女が手話を教わり、学校の友人たちに伝えるというサイクルが生まれたことは、とても大きな意味があったことでしょう。母親として、農家の嫁として。森本さんはその時々でバランスを取りながら、家族や家業と真剣に向き合ってきたのです。

「家族も、家業も、サロンも大切」

そのなかで、2017年にwamilesウインズ士幌サロンの店長を任されたことは、ひとりの女性としての自己実現の形と言えるでしょう。町内には農業を生業とする世帯が多い。日に焼けてダメージを負ってしまった肌をケアすることで、「心地良くきれいになってもらえたら」と森本さん。店長になったことで、勤めるスタッフたちの成長という新たな歓びも見出しつつある。「人との出会いや成長は何よりの財産です」。森本さんの仕事を家族も応援してくれているのだと、うれしそうに話してくれました。日中は畑やサロンで仕事をして、子どもたちが下校する頃には家で迎えるというのが、森本さんの一日。「家族も、家業も、サロンも大切」。自信を持って言いきる姿は、とても輝いています。

森本さんが店長を務める、wamilesウインズ士幌サロン。肌のケアからメイクアップまで、女性の悩みに真摯に向き合う。白と黒をベースに木の温もりを取り入れた柔らかな雰囲気。