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北海道と鹿児島での2拠点生活

井上 伸久さん、まゆみさん

鹿児島と北海道を行き来する生活に

おためし住宅である「農園付住宅」に暮らしている井上伸久さんとまゆみさん夫妻。家族旅行やキャンプに訪れるなどするうちに、募らせていた北海道暮らしへの思い。伸久さんが退職した翌月には、荷物をまとめて北海道へ。鹿児島と北海道を行き来する生活をスタートさせることとなったのです。

高校で美術教師をしていた伸久さん。絵のモチーフ探しという意味でも、北海道の旅は好奇心をかきたてられるものでした。「たとえば、今年のテーマは“湖”にしようと決めてあちこちを回ったり」。しかし、勤め人だった頃は長期休暇を取れるのは夏と冬だけ。「退職したら、北海道の1年を見てみたいねって話していたんです」と、まゆみさんが言葉を添えます。

畑仕事にチャレンジする幸せな時間

1年間を豊頃町で過ごした後、士幌町へ。鹿児島にいた頃は畑仕事をやったことはなかったそうですが、2年目ともなれば勝手もわかってきたところ。「少しずつ実っていく過程が楽しくて」。栽培した豆から種を取っておいて、翌年植えるという自家採種にも挑戦しました。「植えれば、ちゃんと芽を出すのね」。そんなささいなことにも、確かな幸せを見出しています。

農家バイトにも参加したそう。伸久さんは、大型ハーベスターに乗り込んでジャガイモの選別作業。「これがけっこう、大変なんですよ」。まゆみさんは、ハーベスターだと酔ってしまうそうで、「でも、白菜の収穫はできたんです」。楽しかったね、と、2人は笑みを交わします。

雪は迷惑なものではなく、楽しむもの

旅をしていた頃、十勝にも何度か訪れたことがあったという2人。思わず深呼吸したくなる土地の広大さや、満天の星の美しさは知っていたけれど、住んでみて特に実感するのは「冬の魅力」と話してくれました。「冬でも天気がいい。明るい雰囲気があります」と伸久さんが言えば、「雪が降ったら外で遊んだりね」とまゆみさん。雪が降ったときは、家の庭に除雪された雪をあえて運んでもらうと聞いて、思わず耳を疑ってしまいます。

かまくらを作ったり、ツララでの造形物作りに興じたり。伸久さんの感性を持ってすれば、雪に埋もれた庭さえも、とっておきの遊び場になるのです。除雪作業にうんざりしている場合ではない。なんでも「楽しみ」に換えてしまうのが、井上夫妻流の暮らし方です。

地域交流のサイズ感がちょうどいい

地域住民との交流についても、「士幌町はちょうどいいサイズ感かも」と話す。町の行事があると、地域の人が一緒に参加しようと誘ってくれるそう。

「とってもありがたいですよね」。

聞いたことはあったけれど、実際に見るのは初めてだったというハスカップの収穫体験、地域の小学校の運動会、パークゴルフにゲートボール、収穫祭などの祭。町内会にも所属し、広報紙をチェックするなど積極的に情報を収集しており、「今度、糠平のタウシュベツ橋梁までスノーシューを履いて歩くツアーに参加するんですよ。広報でツアー情報を見つけたんです」とホクホク顔だ。 

それぞれの地域の魅力を知っているからこその交流方法

住宅の一室は、伸久さんのアトリエ。「窓から畑の様子が見えるんですよ」とのことで、スクスク育つ作物を眺めながらの創作活動。モチーフは、ウトロや豊頃町のジュエリーアイスなど。仕上げた絵は、所属する美術協会に毎年出品しています。

北海道に来て、鹿児島から親戚や友人が遊びに来る機会が増えたそう。「十勝っていいなって思って、帰ってもらえたら」。逆に、北海道でできた友人を鹿児島に招待することもあるそうだ。それぞれの地域の魅力を知っている2人だからこそできる、交流の生み出し方と言える。

「ここでの、ふつうの暮らしが一番」。この、ふとこぼれた言葉こそ、最も大切な価値観なのだろう。